
「今の、なんて言ったんだろう……」 英語会議の最中、ネイティブの弾丸トークに取り残され、気づけば議論は遥か先へ。勇気を出して一度は聞き返してみたものの、二度目も聞き取れなかった。三度目を聞く勇気はなく、愛想笑いをしてやり過ごす――。
この「何度もSorryと言って聞き返すのが申し訳ない」という心理的な苦しみは、多くのビジネスパーソンが通る道です。しかし、この沈黙は、あなた自身の評価とプロジェクトの成功をじわじわと蝕んでいきます。
結論から言えば、聞き返しは「謝罪」ではなく「確認」です。 適切なフレーズとマインドセットさえあれば、何度も聞き返す苦しみから解放され、むしろ「仕事が丁寧で信頼できる人」という評価を勝ち取ることができます。
1. 聞き返しは「能力不足」ではなく「誠実さ」の証
ビジネス英語において、聞き返しは「私が理解していない」という告白ではなく、「あなたの言葉を100%正確に理解して、正しいアウトプットを出したい」という誠実な意思表示です。
ネイティブスピーカー同士であっても、コンテクストを確認するために頻繁に聞き返しや確認(Clarification)を行います。非ネイティブである私たちが、スピードやアクセントを理由に確認を求めるのは、至極当然の権利であり、プロフェッショナルとしての義務です。
2. なぜ「何度も聞き返すこと」に恐怖を感じるのか
私たちが「Sorry?」を繰り返すことに苦痛を感じるのには、明確な理由があります。
① 「英語ができない」と思われる恐怖
聞き返す=英語力が低い、という短絡的な結びつけを自分の中でしてしまっているからです。しかし、ビジネスの場では「英語力」よりも「情報の正確さ」が優先されます。
② 議論を止めることへの罪悪感
「自分のせいで会議が停滞する」と感じてしまう日本人的な配慮が、ここでは仇となります。しかし、誤解したまま進んで1週間後にミスが発覚する方が、チームにとっては数十倍のタイムロスになります。
③ フレーズのバリエーション不足
「Pardon?」「Sorry?」しか手札がないと、同じ場所で足踏みしている感覚に陥ります。状況に応じた「聞き返し」ができれば、それは議論を前進させる「確認(Confirmation)」へと昇華されます。
3. シーン別「聞き返し」フレーズ20選
ここからは、相手の爆速英語をスマートに制御するための20のフレーズを紹介します。
カテゴリー1:物理的にスピードを落としてもらう
相手のテンポが速すぎるとき、まずは土俵を整えるためのフレーズです。
- "Could you slow down a little bit? I want to make sure I don't miss anything important." (少しゆっくり話していただけますか? 重要な点を見逃したくないので。)
- "I'm sorry, would you mind speaking a bit more slowly? My ears are still catching up!" (すみません、もう少しゆっくりお願いできますか? 耳が追いついていなくて!)
- "If you could speak a little slower, it would help me process the information better." (もう少しゆっくり話していただけると、情報を整理しやすくなり助かります。)
カテゴリー2:「分からない箇所」を特定する
「全部わからない」と言うから辛いのです。「ここだけ教えて」と範囲を限定すれば、聞き返しのハードルはぐっと下がります。
- "Sorry, what did you mean by '[Word/Phrase]'?" (すみません、[単語]はどういう意図で使われましたか?)
- "You lost me at the [Topic]. Could you go over that part again?" ([トピック]のところで迷子になりました。その部分をもう一度説明いただけますか?)
- "Could you elaborate on the last point you mentioned?" (最後におっしゃった点について、詳しく説明していただけますか?)
- "I caught the first part, but I missed the second point. Could you repeat that?" (前半は分かりましたが、2番目のポイントを聞き逃しました。もう一度お願いします。)
カテゴリー3:自分の理解をぶつける(最強の確認術)
「もう一度言って」ではなく「こう理解したけど合ってる?」と聞く手法です。これができると、一気に「仕事ができる人」に見えます。
- "Just to be clear, are you saying that [Your Understanding]?" (確認ですが、……とおっしゃっているのでしょうか?)
- "If I understand correctly, the main goal is... Is that right?" (正しく理解していれば、主な目的は……ですよね?)
- "So, the bottom line is [Summary]. Am I on the right track?" (つまり、要するに……ということですね。合っていますか?)
- "Let me see if I've got this right. We need to [Action Item] by Friday?" (確認させてください。金曜日までに……をする必要があるということですか?)
カテゴリー4:オンライン会議の特性を利用する
テクノロジーのせいにしてしまえば、あなたのプライドは傷つきません。
- "Could you put that in the chat box so I can double-check the details?" (詳細を再確認したいので、チャット欄に書いていただけますか?)
- "The audio cut out for a second. Could you repeat your last sentence?" (一瞬音声が途切れました。最後の文章をもう一度お願いします。)
- "I missed that due to some background noise here. Would you mind saying it again?" (こちらの雑音で聞き逃しました。もう一度言っていただけますか?)
カテゴリー5:プロとして「後で詰める」宣言をする
どうしてもその場で理解できない時のための、スマートな引き下がり方です。
- "I'd like to digest what you just said. I'll follow up with some questions via email later." (今の内容を消化したいので、後ほどメールで質問させてください。)
- "This seems like a critical point. Can we revisit this at the end to ensure alignment?" (重要な点のようなので、認識を合わせるために最後にもう一度確認させてください。)
- "I'm not familiar with that specific term. Is there a document I can refer to later?" (その用語に詳しくありません。後で参照できる資料はありますか?)
4. コラム:「何度もSorry」という苦しみを抜け出すために
ここで少し、精神的なお話をさせてください。
「何度も聞き返すのが申し訳ない」という苦しみの正体は、「完璧主義」と「相手への過度な気遣い」です。英語会議において、あなたは「英語のテスト」を受けているのではありません。「ビジネスの目的を達成するためのコミュニケーション」をしているのです。
実は、ネイティブ側も「日本人は分かったふりをするから怖い」と思っていることがあります。 彼らにとって、一番困るのは「YESと言ったのに、1週間後に何も進んでいないこと」です。
何度も聞き返す苦しさを抜け出すコツは、「Sorry(ごめんなさい)」を「Thank you for clarifying(説明してくれてありがとう)」に変換することです。
- × "I'm sorry, I don't understand."(ごめん、わからない)
- ○ "Thank you for the explanation. Just to be 100% sure..."(説明ありがとう。100%確実にするために確認だけど……)
このように、感謝をベースにした確認作業に変えるだけで、あなたの心理的な負担は劇的に軽くなります。
プロのアドバイス 何度も聞き返すのが心理的にどうしても苦しい時は、無理をせず「録音」に頼るのも一つの立派な戦略です。
全てをその場で理解しようとせず、重要なポイントだけをフレーズで確認し、残りは後でAIに文字起こしさせる。この「逃げ道」を作っておくだけで、会議中の心の余裕が全く違ってきます。
詳しくはこちらの記事:[英語会議の録音許可はどう取る?スマートな頼み方とおすすめAIツール]
4. 結論:聞き返せる人は、プロジェクトを救う人
最後にもう一度お伝えします。爆速の英語を止めて確認することは、恥ずべきことではなく、プロフェッショナルとしての「誠実さ」そのものです。
今回紹介した20のフレーズを武器に、まずは「分かったふり」を1回やめることから始めてください。聞き返した後に相手が「Oh, sure!」と笑顔で言い直してくれたとき、あなたは「何度もSorry」という呪縛から解き放たれるはずです。