
お正月、親戚からいただく「お年玉」。 これまでは「将来のために郵便局や銀行に預けておこうね」と全額貯金するのが日本の家庭の「正解」でした。しかし、その常識がいま、大きな転換期を迎えています。
結論から言えば、お年玉を全額貯金するだけなのは、今の時代、もったいない(損をしている)かもしれません。
テレビでもおなじみのパックン(パトリック・ハーランさん)は、著書『パックンの森のお金塾』の中で、子供のうちからお金に働いてもらう感覚を養う重要性を説いています。
本記事では、「お年玉×投資」をテーマに、なぜ全額貯金が時代遅れと言われるのか、そしてパックン流の「賢い投資のやり方」について、徹底解説します。
1. なぜ「お年玉を全額貯金」は時代遅れなのか?
かつての日本は、銀行にお金を預けておくだけで年利5〜7%もつく時代がありました。しかし、今は超低金利。それどころか、私たちの資産を脅かす「ある敵」が現れています。
インフレ(物価上昇)という目に見えない泥棒
パックンが本の中で警鐘を鳴らしているのが、物価が上がる「インフレ」です。 例えば、今1,000円で買えるおもちゃが、10年後には1,200円出さないと買えなくなっているかもしれません。銀行の利息がほとんどつかない現状では、貯金の「数字」は変わらなくても、そのお金で「買えるもの」が減ってしまう——。これこそが、全額貯金が「損」だと言われる最大の理由です。
「貯金=安全」という思い込みを外す
日本人は世界的に見ても貯金が大好きですが、パックンは「現金のまま持っておくのは、実はリスクがあることなんだ」と教えてくれます。お金を眠らせておくのではなく、社会を良くするために「投資」として回し、その成長のお裾分けをもらう。この視点を持つことが、これからの時代を生き抜く子供たちには不可欠です。
2. パックン流・お年玉の使い道「半分ルール」
『パックンの森のお金塾』で紹介されている非常に実践的な方法が、お年玉を「3つのバケツ」に分ける考え方です。
① 今使うお金(消費)
もらったお年玉のすべてを投資に回す必要はありません。パックンは「今を楽しむこと」も大切にしています。欲しかったゲームや本を買うことで、お金を使う満足感を得る。これは、お金に対するポジティブな感情を育みます。
② 貯めておくお金(貯金)
近い将来(1〜2年以内)に欲しいものがある場合や、緊急時のために少し取っておく分です。
③ 増やすためのお金(投資)
これが今回のメインです。パックンは、お年玉の半分(あるいは一定割合)を投資に回すことを提案しています。
「お年玉でもらった1万円、5,000円は今使っていいよ。でも残りの5,000円は、未来の自分へのプレゼントとして投資してみない?」
このように親子で会話することから、子供の金融教育は始まります。
3. 子供に教えたい投資の3原則:長期・分散・低コスト
投資のやり方を教える際、親も子も守るべき「パックン流の鉄則」があります。これさえ守れば、大きな失敗は避けられます。
原則1:長期(Time is Money)
子供の最大の武器は「若さ=時間」です。パックンは「複利」の力を熱心に説いています。 今預けたお年玉が、10年、20年と運用されることで、利息が利息を生む雪だるま式を体験できるのは、子供時代から始めた人だけの特権です。
原則2:分散(Don't put all eggs in one basket)
「この会社が好きだから、お年玉全部でこの会社の株を買う!」というのは、子供には分かりやすいですが、もしその会社が倒産したらお年玉はゼロになります。 パックンが推奨するのは、世界中の何千という企業に少しずつ投資する「インデックスファンド(全世界株式など)」です。世界経済が成長すれば、子供のお金も一緒に育ちます。
原則3:低コスト
投資には「手数料」がかかります。せっかく運用で利益が出ても、高い手数料を引かれては意味がありません。銀行の窓口ではなく、ネット証券などを活用して「信託報酬(管理コスト)」が極めて低い商品を選ぶ。この「コスト意識」を教えることも立派な教育です。
4. 【実践編】お年玉で投資を始める3つのステップ
では、具体的にどう動けばよいのでしょうか。家庭でできるステップを紹介します。
ステップ1:ネット証券で「未成年口座」を作る
親が使っている証券会社(SBI証券や楽天証券が一般的)で、子供名義の「未成年口座」を開設しましょう。郵送やスマホで手続き可能です。
ステップ2:親子で「投資信託」を選ぶ
「全世界株式(通称:オルカン)」などのインデックスファンドを選びましょう。 「この1枚のチケット(投資信託)を買うと、アップルもアマゾンもトヨタも、世界中のすごい会社のオーナーになれるんだよ」と説明してあげると、子供の目が輝きます。
ステップ3:注文ボタンを子供に押させる
これこそが一番の教育です。自分のお金(お年玉)が、スマホやパソコンを通じて社会へ出ていく瞬間を体験させます。「これで君も世界経済のパートナーだね」と声をかけてあげてください。
5. 投資教育で見に付く「節約筋」と「判断力」
パックンの本には「節約筋(せつやくきん)」という面白い言葉が出てきます。 これは、無駄遣いを我慢して投資に回す力のことで、筋肉と同じように鍛えられるという考え方です。
お年玉を投資に回す経験をすると、子供の行動に変化が現れます。 「ここで100円の無駄遣いをするより、投資に回して10年後に200円にしたほうがいいかも」 という長期的な視点での判断力が身につくのです。これは受験勉強やスポーツ、将来のキャリア形成にも通じる、極めて重要な「生きる力」になります。
6. 親が絶対にやってはいけないこと
子供にお年玉投資を教える際、親が気をつけなければならない注意点もあります。
- 損をした時に「ごめんね」と言わない 投資にリスクはつきものです。価格が下がった時は「今はバーゲンセール中で、安く買える時期なんだよ」と、資本主義の仕組みを教えるチャンスにしてください。
- 親の判断だけで銘柄を決めない 必ず子供と一緒に選びましょう。親が勝手にやってしまうと、それは単なる「親の資産運用」になってしまい、教育になりません。
- 短期的な結果を求めない 「1ヶ月でいくら増えた?」と頻繁にチェックするのはNGです。1年単位、あるいは数年単位で「ゆっくり育てるもの」という姿勢を見せてください。
子供の投資教育に関するよくあるQ&A
「お年玉で投資なんて本当に大丈夫?」と不安に思う保護者の方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q1. もし投資したお年玉が減って(元本割れして)しまったら、子供にどう説明すればいいですか?
A. 「社会の勉強代」としてポジティブに捉えましょう。 パックンも説いているように、相場には波があります。お金が減った時は「今、世界中の企業が新しい発明のために準備をしている時期なんだよ。安く買えるチャンスだね」と、長期的な視点を持つ大切さを教える絶好の機会です。親が焦らず「いずれ戻るから大丈夫」とどっしり構える姿勢を見せることが、子供の安心感に繋がります。
Q2. 投資を教えると「楽して稼ごうとする」ような、お金に汚い子になりませんか?
A. むしろ逆です。「お金と社会の繋がり」を理解し、働く価値をより深く知るようになります。 投資とは、頑張っている企業を応援することです。「自分が投資したお金が、新しい薬の開発や、環境に優しい車の開発に使われている」と教えることで、お金は「誰かの役に立った対価として循環するもの」という健全な価値観が育ちます。
Q3. 投資を始めるには、まとまった金額が必要ですか?
A. いいえ、100円からでも始められます。 今のネット証券(SBI証券や楽天証券など)では、投資信託を100円単位で購入できます。「お年玉の全額」ではなく、まずは「お年玉の中の1,000円だけ」といった少額からスタートすれば、親御さんの心のハードルも下がるはずです。
Q4. 手続きが難しそうで、何から手をつければいいか分かりません。
A. まずは「親と同じ証券口座」で未成年口座を開くのが最短ルートです。 親御さんが既に証券口座をお持ちなら、ログイン後の管理画面からお子さんの「未成年口座」を簡単に申し込めることが多いです。まずはマイナンバーカードを手元に用意して、公式サイトの「未成年口座開設」ボタンを押すことから始めてみてください。
Q5. 投資を始めた後、ほったらかしでも大丈夫ですか?
A. 基本は「ほったらかし」でOKですが、年に一度の「お年玉会議」をおすすめします。 子供の投資は10年以上の長期戦です。毎日画面を見る必要はありません。ただ、毎年のお正月など、お年玉をもらうタイミングで**「去年投資した分は今どうなってるかな?」と一緒に確認する習慣**をつけると、教育効果がさらに高まります。
次のステップ
この記事の「Q&A」まで読んだあなたは、すでに子供の将来を真剣に考える素晴らしい一歩を踏み出しています!
もし、さらに具体的な銘柄選びや、パックン流の「お金の哲学」を深く知りたい方は、ぜひ『パックンの森のお金塾』を手に取ってみてください。親子で読むことで、お金の話が家庭での「共通の話題」に変わりますよ。
7. まとめ:お年玉は「未来の可能性」へのチケット
「お年玉を全額貯金する」のは、かつての正解でした。しかし、変化の激しいこれからの時代、本当に子供を守るのは「現金」そのものではなく、「お金をどう扱うかという知恵」です。
『パックンの森のお金塾』が教えてくれるのは、投資のテクニックだけではありません。お金を通じて、世界がどうつながっているか、どうすれば自分と社会を豊かにできるかという哲学です。
今年のお年玉から、まずは1,000円、5,000円といった少額からでも構いません。お子さんと一緒に「未来への投資」を始めてみませんか?
その一歩が、数十年後、お子さんにとって何物にも代えがたい「最大のギフト」になっているはずです。